A.原則として該当しません。
出張の際に、電車や航空機に乗って目的地に向かう移動時間は、労働時間に該当し賃金を支払う必要があるというご質問は多くあります。労働時間について労働基準法には明確な定めはなく、行政解釈によって「使用者の指揮命令下に置かれている労働時間」とされています。単に電車等に乗って移動している時間は、飲食をしても、寝ていても、読書をしていても良いような場合には、休憩時間と同質であって、労働時間とは解されないとされています。
判例においても「移動時間は労働拘束の程度が低く、これが実勤務時間に当たると解することは困難である」との判断がなされています。(平6.9.27東京地裁判決、横河電機事件)
ただし、移動時間であっても、「物品の運搬」等それ自体が業務である場合には労働時間に該当します。たとえば、現金・機密文書・貴金属等を無事に目的地へ運搬することが出張の目的のような場合です。
けれども、移動時間が労働時間に該当しないとしても、業務と全く関係のない時間ではなく業務のために拘束された時間です。従業員にとっては、出張先が遠ければ朝早く出て帰りも遅くなることもあり、その分の負担は通常の出勤よりも重くなります。そのため、出張の距離に応じて相応の出張手当を支給して折り合いをつけるのが妥当とされています。
また、労働時間に該当しない場合であっても、災害にあったよう場合に労災給付の対象となるかどうかについては、業務起因性が認められれば給付の対象となりえます。