2021年10月19日、一部上場会社の子会社様で管理職を対象としたカスタマーハラスメント研修を行わせて頂きました。
ご依頼頂いたのは、BtoCサービス業の会社様ですが、役員の方が、従業員が顧客からの理不尽なひどい叱責を受けたことが許せないと心を痛め、「もう従業員にこのような思いをさせたくない」との熱い想いでのご依頼でした。
カスタマーハラスメントについてはまだ社会で一般的に問題意識もあまり高くはなく、また、社労士の専門分野というわけでもありませんが、ハラスメント対策は社労士の関わる分野でもあり、ハラスメント研修の一環としてお引き受けさせて頂くことにしました。 当研修を企画した役員の方の切実な想いを受けて、社内でカスタマーハラスメントに関する理解を深め、そして全社でこの問題に取り組むきっかけとなって頂けたらとても嬉しいとの想いをもって私もこの研修開催に臨みました。
研修はZOOMでのオンライン開催しました。出席できなかった方のために、録画をYouTubeで限定公開(期間と視聴できる人を限定)する対応を取らせて頂くことにしました。
研修は次の内容で進めました。
1 …カスハラとは何か?法整備の現状
2 …クレームとの違いは?
3 …カスハラはなぜ起こるのか?
4 …企業の責任と取り組むべきこと
5 …対策事例
6 …具体的な対応の検討
カスハラの現在の法的・社会的な位置づけや定義、また具体的な対応の方法まで幅広くお伝えすることができたのではないかと思います。 会議の最後には、社長と企画者である取締役の方が、「裁判をしてでも従業員を守っていく」、「カスハラ問題に会社として取り組んでいく」という決意を表明され、「これからだ!」という声が上がる意気込みの中、研修は終了しました。
私もこの研修が有意義であったと言って頂けたことが嬉しく、また、知識と想いを共有できたことでとても充実した時間を過ごすことができました。今後マニュアル作り等の会社の体制整備にも関わらせて頂く予定です。
特にBtoCのサービス業や小売業の企業様は、同じようなご経験をされているかもしれません。カスタマーハラスメントに関するご質問等ありましたら是非弊所へご相談ください。
カスタマーハラスメントって何?
●カスタマーハラスメントとは何か
略してカスハラともいいますが、未だ法制化されていないハラスメントですので、カスタマーハラスメント(カスハラ)というのは通称名になり、定義も正式にはありませんが、昨年法制化された「パワハラ」の指針第7項目に「顧客等からの著しい迷惑行為(暴行、脅迫、ひどい暴言、著しく不当な要求等)」と定義づけされています。
●企業はカスハラに取り組む必要があるのか?
カスハラの法制化はされていませんが、企業には「安全配慮義務」(労働契約法第5条等を根拠)があり、企業は「常に従業員の安全(心身の健康)に配慮しなければならない」となされています。ですので、カスハラを放置して従業員がメンタル不調等に陥ること等があれば、企業の対応によっては従業員に対し賠償義務を負うリスクもあります。また、パワハラ指針第7項目では、カスハラについての「企業の望ましい取り組み」が記載されています。
●カスハラに取り組むことで企業にメリットはあるのか?
カスハラを放置することは、企業が安全配慮義務違反を問われたり労災申請につながる可能性のほか、次のようなリスクを内包します。
①従業員の休職による事務手続きの発生や他の従業員への業務のしわ寄せ(休職リスク)
②貴重な人材の離職リスク(人材喪失リスク)
③メンタル不調による本人の士気や能率の低下及び職場への波及による職場全体の士気低下リスク(能率低下リスク)
ですので、カスハラ対策に取り組むことはこれらのリスクを軽減し生産性の高い職場づくりにつながると考えられます。